【十二人の手紙】隠れた名作どんでん返し(書評)
十二人の手紙
(著:井上ひさし)
手紙だけで進むストーリー。いかにどんでん返しが仕掛けられるのか。
【あらすじ】
以下13篇。
・(プロローグ 悪魔)就職上京した柏木幸子。社長に絆されて挙げ句の果てに…。
・(葬送歌)作家中野慶一郎に自身の戯曲の批評を依頼した小林文子。その結果は?
・(赤い手)出生と同時に母を亡くした前沢良子の28歳で事故死するまでの壮絶な人生。
・(ペンフレンド)北海道旅行をネタに文通相手を募集する本宮弘子。お相手の酒井健一郎とは。
・(第三十番善楽寺)記憶喪失で足が不自由な古川俊夫の安否が確認された便りで、彼の秘密がが明らかに?
・(隣からの声)オーストラリアに長期出張中の夫悦男に隣人の様子を書き綴る水戸博子。だんだん隣人の様子が怪しくなり始める。
・(鍵)鞍馬山中の貧乏寺に泊まり込んで山を描くと言って戻らない画家鹿見木堂と妻貴子とのやり取り。そんな中、殺人事件発生。
・(桃)高名な奥様たちが集まる社交クラブが、ある養護施設に対し「1日母親」を提案。しかし養護施設はこれを拒否。その理由は?
・(シンデレラの死)子供の頃から苦労して上京し女優を志す塩沢加代子。その思いを高校の恩師に綴るが…。
・(玉の輿)幼少期から父と苦労の2人暮らしから始まり、玉の輿、夫の浮気、父の死去、そして離婚と綴る手紙。そして驚きの注釈とは。
・(里親)和子が働くバーに来る作家中野慶一郎と弟子の藤木。着手中の小説「里親」を中野に酷評された挙句に盗作されそうになり…。
・(泥と雪)25年ぶりの同窓会きっかけで当時から憧れていた真佐子に手紙を送る佐伯孝之。同じ同窓生の津野次郎の妻の身でありながら、佐伯の熱意に真佐子は徐々に応じ始める。
・(エピローグ 人質)スキー場のホテルにて立て篭もり事件発生。人質は…その後の皆さん達。
【評価/感想】
評価:★★★★☆
これは驚きです!ですが、未熟者の私は1回目の読了ではよく分かりませんでした。
しかし、しっかり人物を把握しながら読むとどんでん返しが炸裂しているではありませんか!
という事で、3回目の読み返しです。
まず、幸子や文子。弘子や博子。
外国人名が覚えられない!と言っていますが、日本人名もなかなか手ごわいもんですね。
最初はさっぱり頭に入ってこない。いやいや、ここに裏があるのでは?と何回も行っては戻っては、と…。
(赤い手)は、分かりやすく凄いですね。
解説の言葉をお借りすると、出生届、婚姻届等だけで表現される一生は、「まるでストロボライトのまばゆい点滅のようなあざやかさで一気に描き…」とはまさにその通り。
しかもまだもうひとついるんよね。
その他のお話も今見ると全てどんでん返ってますね。素晴らしいです。
また最後の(人質)もまさにエピローグですね。
これも帯の記載にあった「どんでん返しの見本市だ!!」の言葉に惹かれて購入しましたが、全くその通りでした。脱帽です。
今回書評ブログを始めた為に、2度目読みをしましたが、この機会が無かったらスルーしていたかと思います。
アウトプットって大事!